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    伝統的な中国の法制からみた中国人の法律観

 
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 中国の法律制度の特徴や他の国々との違いを紹介しよう(中国の法制を「中華法系」という)。

以下、特徴を要約する。
1、 倫理秩序の頂点に皇帝を戴き、立法権・司法権は皇帝に帰属する。司法管轄とか審級という概念がない。<重要事件は皇帝の裁可による。
2、重刑と厳刑を原則とし、社会の安定を最高の目的としてきた。<みせしめということ。
3、統治階級内の矛盾の緩和と等級秩序の維持を重んじる結果、ケース・バイ・ケース(「同罪異罰」という)になる。<身分官職で異なる処罰になる。
4、 儒教による「礼」を重んじ、犯罪者の主観的動機を重視してきた。<思想犯・反体制活動防止を重視する。

こうした考えの法制が2000年以上にわたって続いてきた。

  最高権威である皇帝は所詮、天命によって他の王朝に変わられるまでの暫定的権威ということだ。わが国の天皇のように連綿と連なるというものではない。皇帝の権威自体に不安定さが内包されている。

しかも、1911年の辛亥革命によって誕生した中華民国は軍閥と共産党との内戦に終始し、1949年に誕生した中華人民共和国も文化大革命や天安門事件など混乱の時期が長かった。安定した欧米流の法制による統治を経験していないまま今日に至った。

  10年余にわたった文化大革命の大混乱を収束してから制定された75年憲法では、「党の国家への優位」を反復強調、79年以降、鄧小平の主導による改革開放政策を進める中で社会の安定を求め刑法や刑訴法が制定されたが(1979年)そこに規定されている罪刑法定主義は名目だけという状態だった。続く82年憲法、及びその修正が4度行われ今日に至るが、いまだ法律制度の制定過程という状態にある。

  ちなみに刑法第2条は「中華人民共和国刑法の任務は、刑罰をもって全ての犯罪行為と闘争し、もって国家の安全を防衛し、人民民主専政の政権と社会主義制度を防衛し、国有財産と労働者大衆が所有する財産を保護し、公民私人が所有する財産を保護し、公民の人身権利、民主的権利そしてその他の権利を保護し、社会秩序、経済秩序を維持擁護し、社会主義建設事業の順調な進行を保障することである」と規定している。

 国家あっての個人という、国家・「公」優先の考えを繰り返し強調している。中国人社会でのほうによる信頼性は低い。法は自分たちよりも権力者を保護するためのものという感覚が強い。
 中国人が信用できないとする代表が、裁判官、次いで警察官、医者というのだから押して知るべし。

 こうした中国人の感覚の、日本人の感覚との差異を理解しなければ中国社会は理解できない。権威に従順な日本人は「悪法も法なり」といって法律を守ろうとするが、中国人は「上有政策、下有対策」ということで、権威に対する信頼性がない。日本人と中国人の権威に対する感覚はあべこべなのだ。
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プロフィール

大貫啓行(おおぬきひろゆき)

Author:大貫啓行(おおぬきひろゆき)
麗澤大学経済学部・大学院教授(2014年4月から名誉教授)、(公)モラロジー研究所教授。元警視監。
東京大学法学部卒業。
1967年警察庁入庁。内閣官房、外務省、防衛庁への出向も経験、中国情報分析を中心とした内外情報畑一筋30年のエキスパート。
お問い合わせはkikikanri110@gmail.comまで。

在中国一等書記官(文化大革命直後の政治情報収集)、警視庁外事1課長(ソ連スパイ・レフチェンコ事件を指揮)、内閣情報調査室国際部(中国・ソ連分析キャップ)、防衛庁調査1課長(ソ連による大韓航空機撃墜事件の事後対応)、秋田県警察本部長、長崎県警察本部長(雲仙普賢岳噴火災害警備を指揮)、警察大学校特別捜査幹部研修所長、警察庁国際部長(初代国際部長として、阪神淡路大震災、オウムサリン事件、国松警察庁長官狙撃事件等の危機管理に携わる)、中国管区警察局長等を歴任し、1996年より麗澤大学教授・2014年より同大学名誉教授。

川崎市顧問・危機管理アドバイザー(2004年~2014年)をはじめ、多くの自治体で各種の顧問・委員等も務めている。
【著作等】
(著書)「変革~日本の対外姿勢と危機管理」(広池学園事業部)
「現代中国の群像」「暮らしの法学~安全を考える社会システム」
「国際紛争と日本の選択」『暮らしの行政~私と公の共生システム」
「説得力の養成」(以上麗澤大学出版)
「中国はどこに向かう」(白金出版)ほか
(論文)「災害に関する危機管理」「雲仙普賢岳噴火災害警備考」
「在ペルー大使公邸占拠事件の考察」「公務員における意識改革の現状」
「中国~国家・社会変革方向の考察」(以上麗澤大学紀要)など

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