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薄裁判の誤算

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  収賄と横領、職権乱用の罪で起訴されている薄被告公判2日目の23日、同被告は初日同様強気の姿勢を崩さなかった。
  検察側は、同被告の妻、谷開来受刑者(殺人で執行猶予付き死刑確定)を録画により「(実業家から)賄賂として別荘を買ってもらったことを承知している」と、証言させたところを2日目のハイライトにしたかった。しかし、薄被告は、妻の証言を「嘘証言」「気がおかしくなっている」と強い言葉で否定。がんとした否認を一層強めたのは誤算だったろう。(3日目に妻の捜査を巡って職権乱用を問われた点に関しては否認、懲役15年で服役中の王受刑者が米国総領事館に駆け込んだ際の対応については、相応の責任を認めた。ただし、検察の職権乱用罪は否認した。薄被告の巌とした否認の姿勢は、当局の描いた図式で収まらない政治的な裁判の印象を強く感じさせるものとなった。)
  2日目も異例のネット中継で透明性がアピールされた。ポータルサイトには裁判への書き込みが可能だが、全て被告を批判するものだけ。支持するサイドの書き込みはすべて、即座に削除されている。人民日報運営のサイト、「人民網」には、薄被告の法廷での主張を批判・反論するものが10本以上掲載されている。また、国内各社の独自取材・報道を禁止する通達を出してもいる。当局に有利な世論の誘導に神経を使い躍起になっている。何としても、政治的な権力闘争での敗者ではなく、腐敗官僚だとのレッテル貼りを成功させなくてはならない。当局の描いた意図は余りにも明らかだった。
  当局は、裁判の透明性を印象付けると共に、薄被告の権力をかさに着た個人的な収賄という悪質汚職事件として終えたいのだ。しかも、さまざまな影響を考慮しなければならない重慶時代(前任者汪洋副首相など)の収賄ではなく、大半は大連市勤務時代のものだった。副市長や市長として16年間も勤務、今でも支持者が多いという。
  そもそも裁判自体の中立性を信用しない中国人が当局の思惑通りに洗脳されることはないだろう。格差拡大に対する不満が深刻化している中で、裁判によって印象付けられた特権指導層の強欲さは一人被告の例外的な事例とすることは不可能だ。当局の、綱紀粛正や経済運営に対する国民の眼は厳しくなり、政権運営は一層難しいものになることは避けられない。 
  しかも、当局は薄被告に対する保守系幹部の支持に配慮して、温情ある軽い刑で収めたいようだが、ここまで頑強に否定された上での軽い刑で、国民がどのように受け止めるか?想定外の進行になっている感は強い。


  なぜ薄被告の公判がここまで注目されるのか?
  薄被告が大衆動員という毛沢東式の手法で貧困層大衆に熱狂的に迎えられ、強硬な支持者を増して行った。こうした手法は、利権を謳歌し既得権益層となった保守政権にとって制御不能になる恐れを抱かせることになった。端的に言えば、文化大革命の再来への恐れだ。そうなったら自分たちの権力が奪われるという抵抗でもあった。
  胡錦濤・温家宝前指導部は、薄の排除を決断したのだった。その権力を引き継いだ現習近平指導部は、薄被告を汚職・腐敗幹部として葬りさることに必死になっているということだ。

  公判は中国では異例の長さになる5日間の審議で終了した。判決は予め予定されている通りになる可能性が高いが、あまりに頑強に否認したため変更する必要があるかどうかの判断になる。判決はどうであれ、生涯釈放されることはない。釈放されることがあるとすれば、その時は中国共産党にとって、権力闘争などでの断続的な権力構造の変化がある場合ということになる。

  
  薄被告は原罪の権力側に屈することを拒んだ。格差の拡大する中、貧困層の中には、薄被告のような剛腕の左派政治指導者への待望論が存在している。事実、公判中に、かつての勤務地である遼寧省や重慶市に加え毛沢東の故郷湖南省で薄被告を支持するデモが発生した(小規模で即座に抑え込まれたが・・・)。かくして薄被告は保守派のシンボルとして長く存在し続けることになった。そうした意味で、将来の復活を狙った闘争を選んだということだ。5日間の公判はそうした伝説上の人物となることを目指した最後の演技であった。

  習近平指導部にとって厄介な存在となることは疑いがない。貧富の格差がさらに拡大するなどし、統治が危ういという状況が生じるたびに、薄き来氏は党中央への反逆者の旗印になるのだから。

  
  24日、裁判3日目は薄被告の妻(谷開来受刑者)の犯行に気付いた部下(当時重慶市副市長・王立軍受刑者)を職務から外したことを、職権乱用に問う検察に対して、薄被告は「(道義的)責任はあるが罪ではない」と否認した。王受刑者も証人として出廷したが、薄被告はこれまで王受刑者の証言を「無駄話」と一蹴してきたが、法廷でも堂々と対決し否定した。
  王受刑者は、遼寧省長在任中からの部下で重用されたが、関係が悪化したことをきっかけに成都の米総領事館に駆け込み、薄被告失脚の切っ掛けを作った。
  薄被告の威厳を保った冷静な姿勢に当局の悪性を印象付けたいという作戦は失敗した感が強い。少なくとも当局の期待した効果は表れていない。公判は3日間でも言わらず、異例の4日目に継続された。
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プロフィール

大貫啓行(おおぬきひろゆき)

Author:大貫啓行(おおぬきひろゆき)
麗澤大学経済学部・大学院教授(2014年4月から名誉教授)、(公)モラロジー研究所教授。元警視監。
東京大学法学部卒業。
1967年警察庁入庁。内閣官房、外務省、防衛庁への出向も経験、中国情報分析を中心とした内外情報畑一筋30年のエキスパート。
お問い合わせはkikikanri110@gmail.comまで。

在中国一等書記官(文化大革命直後の政治情報収集)、警視庁外事1課長(ソ連スパイ・レフチェンコ事件を指揮)、内閣情報調査室国際部(中国・ソ連分析キャップ)、防衛庁調査1課長(ソ連による大韓航空機撃墜事件の事後対応)、秋田県警察本部長、長崎県警察本部長(雲仙普賢岳噴火災害警備を指揮)、警察大学校特別捜査幹部研修所長、警察庁国際部長(初代国際部長として、阪神淡路大震災、オウムサリン事件、国松警察庁長官狙撃事件等の危機管理に携わる)、中国管区警察局長等を歴任し、1996年より麗澤大学教授・2014年より同大学名誉教授。

川崎市顧問・危機管理アドバイザー(2004年~2014年)をはじめ、多くの自治体で各種の顧問・委員等も務めている。
【著作等】
(著書)「変革~日本の対外姿勢と危機管理」(広池学園事業部)
「現代中国の群像」「暮らしの法学~安全を考える社会システム」
「国際紛争と日本の選択」『暮らしの行政~私と公の共生システム」
「説得力の養成」(以上麗澤大学出版)
「中国はどこに向かう」(白金出版)ほか
(論文)「災害に関する危機管理」「雲仙普賢岳噴火災害警備考」
「在ペルー大使公邸占拠事件の考察」「公務員における意識改革の現状」
「中国~国家・社会変革方向の考察」(以上麗澤大学紀要)など

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