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高速道路関連事業従事者への講演レジメ保全安全管理者にとっての技術者倫理~「信頼が基本」という原点の確認~

企業のコンプライアンス教養・講演のサンプル。
企業の特性に応じて変更を加えるが、基本的場分野を理解していただけるよう高速道路関連企業職員を対象としたものを示しする。
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<はじめに>
  担っている仕事へのプロフェッショナルとしての誇りを大切に(職場に仕事に対する肯定感を醸成させること)。わが国の大動脈・高速道路にかかわる全国の仲間全体への熱い思い(連帯感)。
  現場を預かっていることに対する責任と誇り、現場の一人ひとり・チーム構成員の心と通じ合った生きた安全管理の実践への決意(現場第一主義)。マニュアルなどとして結実している職場の先人たちの経験と知恵の結晶に対する初心に帰っての素直な噛み締め。
同時にマニュアル化しにくい保安安全業務の本質を要理解。それらの基本に加えて、各自の担当する現場やチーム員などの具体的な状況に応じた肉付けの妙。ここが皆さんに期待されているところ。その肉付けが成功できるように、保全安全管理者としてのさらなるグレードアップを心がけていただきたい。
  
1 管理者としての研鑽(心がけるべき基本事項)~風通しのいい職場造りが基本
① 話をよく聞く・・・部下の話には耳を傾けて聞く。中でも、耳に痛い話は絶対に冷静に、そして話してくれている人に感謝して聞くことが大切。
② 周囲をよく観察する・・・部下の一人ひとりに真摯に向かい合う。
③ 自分やチームをできるだけ客観的に見る・・・自分及び自分たちがどう見られているのか。常に客観的に自分たちを見るように努めることが肝要。
④ 他人には寛容に、自分には厳格に。
⑤ 高い目標を抱いて日々、努力し、反省し、感謝する。

2「感性」の大切さ
  日本人は感性の民とも言われる。四季の豊かな変化の中に暮らしてきた結果か特に感性が発達したのだろうか。以心伝心という言葉も感性の大切さを示している。若者の使う「KY」(空気が読めない)も意味するところは同じだろう。
  企業人としては、「国民が企業に何を求めているか?」「企業をどう見ているか?」ということに敏感でなければならない。特に変化の激しい時代、その時々の変化も含めて、国民の求めているところには常に注意していなければならない。
  変化の激しい時代である今日、国民の企業(人)に対する厳しい眼を適時適切に「感じ取る」心がけが肝要だ。
*公的な分野への批判的な目  
*道路建設を巡る論議
*ガソリン税への注目

3 高まる企業倫理への関心
国民の企業倫理への関心の高まりは誰しも感じている。しかし、心のどこかでそれだけではやっていけないという本音も残存しているから厄介だ。国民(消費者)と企業(人)とのギャップが大きい時代となっている。変わらない企業への国民の苛立ちは急激に激しさを増している。
*信用できない企業が多い60%、信用できない人が多い64%。政治家や官僚への信頼18%・・・朝日世論調査08年2~3月<世の中の信頼が揺らいでいる。

4 企業倫理の本質は「国民のさまざまな注文に対応する企業の誠実さ」
  国民の要求は頻繁に変化することに留意しなければならない。(その都度)変化するどの要求に対しても誠実に対応する行動が、(今日の)企業に求められている。求められているのは、とにかく「社会の求めには誠実に対応します」・・・という企業の姿勢。企業は社会のさまざまな求めに応えることで初めて存在することができ、(結果として)利益を上げることができる。
  
5 従業員の意識も大きく変化している。
  公益通報者保護法(06年施行):指定された通報先は要件ごとに定められている。
①組織内部②行政機関③その他の外部・・・の順序
 *ホイッスル・ブローイング、ヘルプライン、コンプライアンス委員会など各企業の取り組み進む。
 *告訴・告発や内部からの通報全般の急増傾向(例:農水省「食の110番」に対する通報07年10月だけで700件)。
 *第一通報先を組織内部と指定したため、通報者の萎縮・警戒を呼び、現実にはいきなり報道機関への通報などが増えている。
 
6 保全安全管理者に求められるポイント~組織的対応への配意~
(1)事故防止:本人は勿論、家族を含めた関係者全員にとっての損失である事故を全員の総意で絶対に起こさないという決意。事故防止のための総員での取り組み。
(2)交通事故防止:中でも、仕事の性質上、最優先で取り組まなければならない交通事故防止対策。勿論、通勤や私生活での事故防止を含めての取り組みを。事故防止は慣れからくるマンネリに陥ることや寝不足など何らかの原因によって注意力が散漫になることを防止することになる。職場の総員による事故防止への創意工夫の発揮された総力での取り組み。
(3)不祥事防止:各自で判断する基準は、“配偶者や子供に言えないようなことをしてはならない”ということ。誰しも分かっていること。
 * 外部にばれることはない・・・という甘さ(昔のカンが通用しないという現実)。
   「談合」「裏金」など長年の悪習は、もはや通用しなくなっている(通報の多さ)
* 非難の激しさ・・・失うものへの認識。
 * 非公開が隠蔽として取締役個人に賠償責任判決(大阪高裁株主訴訟06・6)
 
(4)「李下に冠を正さず」:やってはならないことをしないだけでなく、疑いを抱かれるかも知れない様な行為を慎むという心得。常に外(他人)からどう見られるかというも物差しを用いる。
 * 規律ある作業ぶり(服装の乱れ、くわえタバコ、仕事場での飲食などにも気を配る)
 * 発声・指差し・整理整頓など

(5)「自らには厳格で、他人には寛容に」:何事も「マアいいや」から問題が生じる。
職場の慣行になっているものでも問題がるものは改める勇気を発揮してもらいたい。
慣れからシミに気づきにくくなる・・・外部からは良く見える。
仲間意識の魔力。
 * 交通規制しているが作業していない。通過車両は非難の目で見がちなもの。
 * 気がつかないうちに出ているかもしれない「高圧的な」と受け取られる態度
 * 小さなことの積み重ねが、結果としてとんでもないこと(信頼の喪失)になりかねない・・・という恐ろしさ

(6)「あれがだめ、これがだめ」ではなく、「チーム一丸となって夢や目標に向かう」要領での士気(モラール)高揚を図るのが現場リーダーの要諦
 * 「苦労した」ではなく「苦労かけた」という現場リーダーの姿勢
 *  緊張感・危機感を持って仕事に臨む。

(7)管理者としての在るべき姿:原点の確認
 * 尊敬する先輩を思い描いて研鑽。いつしか後輩から目標にされる存在に。
 * 一人ひとりの部下・後輩への暖かい思いやり。一流の人ほど気配りができる。
 *「ほめる力」~その場でタイミングよく(瞬発力)
 *「しかりの基本」~本人に分析させる。理由を問う。説明させる。

(8)組織の一員としての基本留意点
  ① 守秘義務
  ② 報告・連絡・相談(報連相)
  ③ ウソの厳禁(ウソがウソを生む)
  ④ 言葉使い(特に電話での応対)
  ⑤ 率先垂範:やってみせる。

(9)個人情報(プライバシー)の保護:無断コピーの厳禁。誰にも見られていないところでこそ厳正・厳格に。

(10)「他山の石」:あらゆる失敗事例が教訓に満ちた宝の山という道理
  * 報道されるさまざまな組織の失敗事例をわが職場に引き寄せて考えること。
  * 紙に書かれていない生きたん教訓にこそ学ぶべき点が多い。
  * 危機管理の要諦でもある。
  ① 基本に徹する
事故原因の圧倒的多数は「単純ミス」・・・東海道新幹線架線切断事故のボルトつけ忘れ・気づかずに東京・新大阪1往復1000キロ走行(1月)、ベルギー通勤電車正面衝突の赤信号見忘れ(2月)
  ② 不祥事などでマスコミの追求を激しくする最大原因は「情報隠し」
    不適切経理など発覚の経緯までの開示企業は少数
   *オフレコは守られないことが多い(結果的に)
  ③ 情報開示(説明)は一発が望ましい・・・小出しへの批判
  ④ 組織的対応・・・誰が応じても同じ内容でなければならない(組織対応)
    自社発表は関係部署で同じものの事前共有
    特に、マスコミ動向関連については上司へ報告する(情報関心)。    
  ⑤ 悪いことは重なりがち・・・事故処理中の事故・地震と大火・繰り返される不祥事(再発防止の重要性、他社の不祥事に我がこととして対応する必要性)

<おわりに>
  ① 一人ひとりの誠実で節度ある行動
  ② 蓄積した専門知識・経験で社会に貢献するという姿勢を誇りに
  ③ 個人として職業人としての、生き方としての「倫理」(倫理道徳は個人レベルに)
  ④ 企業倫理は危機管理・広報戦略として理解
⑤ 振れない「志」・・・埋没しない理念、見抜く目、そして勇気


[参考資料]
1 企業倫理の歴史
  17世紀・・・欧米の企業倫理への関心の高まりは17世紀の奴隷売買、タバコ、ギャンブル、ポルノなどを生業とする企業へのキリスト教など宗教関係者の反対運動にさかのぼるとされる。
 1960年代   公害
73年  第1次石油ショックに伴う狂乱物価、便乗値上げ
70年代後半 企業倫理に関する社会的関心の高まり
         ミルトン・フリードマン「企業の社会的責任の重要性」を唱える。
   80年代   企業倫理に関する学術研究興隆 
   90年代   企業倫理実践のための仕組みづくり活発化
91年 経済同友会「新世紀企業宣言」、経団連「企業倫理憲章」
96年 経団連中心に「企業行動憲章(改訂版)」
2000年代に入って、牛肉偽装買い上げ騒動、米国でエンロンの企業不正経理など、国内外で企業の不正行為が相次いで問題となる。
02年 経団連「企業倫理憲章(再改定版)」
03年    公益通報者保護法(06年4月1日施行)
06年5月  内部統制システム導入の義務付け(改正会社法)
07年6月  消費者団体訴訟制度実施(01年消費者契約法の改正で導入決定)
08年4月  上場会社08年度から内部統制報告書作成と監査人の監査(金融商品取引法)
10年   企業を取り巻くステークホルダー全体のリスクの発見と低減というトータルな発想へ

2 コンプライアンス(Compliance)
  法令順守と訳される。
  欧米では「法令に違反しないように業務を遂行していく」という至極“当たり前”の意味で使用される。日本では「法令の文言のみならず、その背後にある精神まで遵守・実践していく活動」と捉えられている。 (したがって日本の意味合いで英訳するときは、business ethicsあるいはethical-legal complianceとした方が誤解されない。)

3 公益通報者保護法
  06年4月施行。通報者の解雇、降格、減給など不当な処遇を禁止・無効にできる。現行法には違反しても罰則がないなど不備がある。企業のヘルプラインの利用はねたみや不満など本来の制度目的に沿わないものも少なくないが、制度自体を否定する人はほぼなくなった。報道機関など外部への告発をしやすくし、不正を思いとどめさせる抑止力を高める方向での改正する必要が論じられている。

3 企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)
  定義(EU):企業が自発的に法令の規定を上回るレベルで、その趣旨・精神を実践すること。一言で言えば、「よき隣人」として尊敬される社会の一員としての企業ということ。
  欧米の考え方は、性悪説に立脚して、違反企業や違反者に対する強制力の伴ったルール(制裁)、防止や摘発のシステム構築を重視する。
  わが国の性善説を前提とした善意・モラルに依存した考えではない。

4 内部統制
  米SOX法がモデル。仕事の中身を紙に書いて残すことで「意味ある正しい投資情報」を提供することが趣旨。
  わが国では金融商品取引法で内部統制報告制度が定められ、08年事業年度から上場企業は報告書作成、監査人の監査を受けることになった。
定義:「業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の順守及び資産の保全の4つの目的の達成のために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセス」(金融庁企業会計審議会内部統制基準07年2月)

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プロフィール

大貫啓行(おおぬきひろゆき)

Author:大貫啓行(おおぬきひろゆき)
麗澤大学経済学部・大学院教授(2014年4月から名誉教授)、(公)モラロジー研究所教授。元警視監。
東京大学法学部卒業。
1967年警察庁入庁。内閣官房、外務省、防衛庁への出向も経験、中国情報分析を中心とした内外情報畑一筋30年のエキスパート。
お問い合わせはkikikanri110@gmail.comまで。

在中国一等書記官(文化大革命直後の政治情報収集)、警視庁外事1課長(ソ連スパイ・レフチェンコ事件を指揮)、内閣情報調査室国際部(中国・ソ連分析キャップ)、防衛庁調査1課長(ソ連による大韓航空機撃墜事件の事後対応)、秋田県警察本部長、長崎県警察本部長(雲仙普賢岳噴火災害警備を指揮)、警察大学校特別捜査幹部研修所長、警察庁国際部長(初代国際部長として、阪神淡路大震災、オウムサリン事件、国松警察庁長官狙撃事件等の危機管理に携わる)、中国管区警察局長等を歴任し、1996年より麗澤大学教授・2014年より同大学名誉教授。

川崎市顧問・危機管理アドバイザー(2004年~2014年)をはじめ、多くの自治体で各種の顧問・委員等も務めている。
【著作等】
(著書)「変革~日本の対外姿勢と危機管理」(広池学園事業部)
「現代中国の群像」「暮らしの法学~安全を考える社会システム」
「国際紛争と日本の選択」『暮らしの行政~私と公の共生システム」
「説得力の養成」(以上麗澤大学出版)
「中国はどこに向かう」(白金出版)ほか
(論文)「災害に関する危機管理」「雲仙普賢岳噴火災害警備考」
「在ペルー大使公邸占拠事件の考察」「公務員における意識改革の現状」
「中国~国家・社会変革方向の考察」(以上麗澤大学紀要)など

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