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危機管理の視点からの注文   

全国紙への原稿(平成24年11月)

  北海道佐呂間町の竜巻に大自然の猛威を改めて見せ付けられた。地震、噴火、津波、風水害など自然災害に加えてさまざまな事件・事故などへの備え、危機管理の大切さを警告してくれたものと受け止めたい。
そこで事件事故報道に関し危機管理の視点から若干の注文をしてみたい。
中越地震による新幹線脱線原因を跳び上がりと共振の「複合型」とする調査結果に関する6日夕刊報道。L型車両ガイドなどの本格的脱線防止策が地震から既に2年以上を経た現在まで着工されず、さらに来年1月まで待たなければならないのはなぜなのか。完成まで現在のスピードで走行して大丈夫なのか。こうした不安への答が知りたい。読者の願いを背負って対策のより早期推進を促す役を新聞に期待している。
4日夕刊、走行中の自動車「ドアから出火」の記事。事故自動車生産会社の広報       部による「原因究明をする」との談話だけでは物足りない。生産会社の広報ではなく、客観的な専門家のコメントが欲しい。自分の車を心配している読者の素朴な疑問への答。安心のできる客観的で、防止対策上教訓となる知識に満ちた報道で
あって欲しい。          

持久力のなさ/飽きっぽさ      

三日坊主。人のうわさも七十五日。持久力のなさにおいては超1級の日本人。報道陣も読者も実は危機管理には最も不向きな性格を備えている。
雲仙普賢岳噴火災害を長崎県警本部長として経験した。半年、1年と時間が過ぎると関係者はすべてグロッキー気味。危機管理の視点からは、持久力のなさは時として致命傷ともなりかねない。
噴火による第一次的な火碎流の危険が納まった梅雨時の土石流で防ぎえた犠牲者を出してしまった。
耐震偽造、三宅島、談合、院内感染、いじめ、エレベーター、回転ドア、プールなどへの、打つべき手は打ち終わったのか?報道各社には粘り強く警鐘を打ち鳴らす役を務めてほしい。
各紙3面は、8日付産経「誕生日、結婚近い娘の父も」(竜巻被害見出し)のように、被害者や遺族への同情や哀悼など連日「情で満たされる。第一線の現場では火や血といった赤色の写真が求められ、「入学・結婚式の当日」「いたいけな遺児」と涙を絞らせる。
勿論、これらはわが国の読者の求めに応じた結果でもある。
欧米では、原因の究明、再発防止への判断材料などより論理的報道が多い。た       とえばカーブでの自動車事故では半径何メートルのカーブか、路面の形状、天候からスピード、同地点での過去の事故事例など。事故防止対策に資するこれらの報道に努めてもらいたい。

逃げずに直視し続ける          
痛みを伴う場合、「敗戦」を「終戦」、「違法」を「超法規的措置」などと言い換えてまで痛みを軽減させ、癒そうとする癖まである。危機を直視していないからか、議論は回避され、問題解決は先送りされがちだ。
クアラルンプール事件での超法規措置決断時も、官邸対策室で福田康夫総理代
行(三木総理外遊中)や関係閣僚などが何の議論もないまま、その場を支配する空気で決められた。犯人の要求に屈し仲間を釈放するとの違法措置決定を聞き駆付けた土田警視総監の、抗議の弁を振るう姿だけが瞼に鮮明に焼きついている。
常に最悪の事態を想定し逃げずに直視し続ける強靭な精神力なくしては危機管理はなりたたないことをお互い肝に銘じて置きたい。         

この論評は東京本社発行の紙面をもとにしました。
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プロフィール

大貫啓行(おおぬきひろゆき)

Author:大貫啓行(おおぬきひろゆき)
麗澤大学経済学部・大学院教授(2014年4月から名誉教授)、(公)モラロジー研究所教授。元警視監。
東京大学法学部卒業。
1967年警察庁入庁。内閣官房、外務省、防衛庁への出向も経験、中国情報分析を中心とした内外情報畑一筋30年のエキスパート。
お問い合わせはkikikanri110@gmail.comまで。

在中国一等書記官(文化大革命直後の政治情報収集)、警視庁外事1課長(ソ連スパイ・レフチェンコ事件を指揮)、内閣情報調査室国際部(中国・ソ連分析キャップ)、防衛庁調査1課長(ソ連による大韓航空機撃墜事件の事後対応)、秋田県警察本部長、長崎県警察本部長(雲仙普賢岳噴火災害警備を指揮)、警察大学校特別捜査幹部研修所長、警察庁国際部長(初代国際部長として、阪神淡路大震災、オウムサリン事件、国松警察庁長官狙撃事件等の危機管理に携わる)、中国管区警察局長等を歴任し、1996年より麗澤大学教授・2014年より同大学名誉教授。

川崎市顧問・危機管理アドバイザー(2004年~2014年)をはじめ、多くの自治体で各種の顧問・委員等も務めている。
【著作等】
(著書)「変革~日本の対外姿勢と危機管理」(広池学園事業部)
「現代中国の群像」「暮らしの法学~安全を考える社会システム」
「国際紛争と日本の選択」『暮らしの行政~私と公の共生システム」
「説得力の養成」(以上麗澤大学出版)
「中国はどこに向かう」(白金出版)ほか
(論文)「災害に関する危機管理」「雲仙普賢岳噴火災害警備考」
「在ペルー大使公邸占拠事件の考察」「公務員における意識改革の現状」
「中国~国家・社会変革方向の考察」(以上麗澤大学紀要)など

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